一羽一念

One Crane One Mind

Training not only the hands, but the spirit — the Path I walk, the Way I live.

For every patient I will serve, a prayer in every fold.

No.00001–00060

4 cm 角 折り紙

No.00061–00123

2 cm 角 折り紙

No.00124–  

1 cm 角 折り紙

発泡スチロール半球

(術野をイメージした深さ3cmの窪み付き)

マイクロ顕微鏡と
発泡スチロール

包丁の語源となった逸話の一説です.

庖丁という男が文恵君という王のために牛を解きほぐして見せたとき,その技の美しさに王は驚き,「ああ,技術はここまで極まるものなのか」と嘆じました.すると庖丁はこう答えました――「わたくしの好むところは道であって技術ではありません」と.

1cm角の折り紙で折り鶴を折るという行為が,脳神経外科的なテクニックと直結するかどうかはわかりませんし,それは本質的には重要ではありません.大切なのは,折ることそのものが私の「道」であるという点です.

折り鶴を折るトレーニング方法を選択したのも,一日一羽折ると決めたのも,絶やさず折り続けるのも,さらには窪んだ発泡スチロールを頭蓋に見立てる創意工夫を凝らすのも,すべてが私の生き方であり,「道」であり,私自身なのです.

臣之所好者道也、進乎技矣。

(臣の好む所は道なり、技に進めり)

―― 『荘子・養生主』庖丁

學問とは、道の修行にて、藝術のみの修行にてはこれなき義、もちろんに候うこと。

―― 橋本左内『藩校明道館における布令原案』

ロボットやAIが進化し続け,医師の仕事の多くがそれらに取って代わられる未来は,そう遠くないうちに訪れるでしょう.

そんな過渡期に医師を志す私たちは,いかにして自らのアイデンティティを保つのか.平和の世にあってもなお己の「道」を模索し続けた江戸時代の武士たちの姿と重ね合わせずにはいられません.

Noblesse Oblige (高貴な身分に伴う道徳的義務)という言葉がありますが,患者さまの生死を一身に託され,それを救うことのできる医師という職業において,自己完結的に最上級の矜持を抱き(もちろん職業に貴賎はありません),何某にも劣らじという気概を振るわなくてはなりません.

この姿勢は決してegoism(利己主義)ではなく,むしろ,己を修め,その姿勢によって他者を感化し得るという意味でのegotism(自己陶酔)です.

私を形作るすべての要素は,患者さまが命を託すその瞬間にこそ評価されます.ゆえに私が「道」を求め続けることこそが,患者さまの不安を拭い,救うことにつながるのです.

いつか出会うすべての患者様に祈りを込めて,一切の自己欺瞞を許さず今日も明日も折り続けます.